[Draft] 部誌編纂のすすめ――中高放送部の方へ

写真のみで構成された部誌的な冊子――冊子であれば電源や解説員が要らないため各所に配置するなどして部活の新人勧誘に利用しやすい。

対象読者

主に福井市内の学校に通学する放送部所属の中高生

はじめに

放送部も人の出入り次第で技術が盛り上がったり断絶したりしがちです。そんなときは『人類は衰退しました』の「のばら会」が非常に長い世代間で仕掛りの調査資料を次々に託しながら学舎に隠された謎をついに解明したのと同じように部誌を編纂することで自分の世代で学んだアナウンスの奥義やドキュメンタリの極意や Adobe After Effects の秘伝スクリプト,取材を通して得られた新しい視点,Arduino を駆使して作り上げた面白アーティファクトなどを,後の 100 年先の世代にも伝えられるかもしれません。顧問の先生が転任されたら先輩方が卒業したらまたゼロからノウハウを積み上げということを少し緩和できそうです。また新入部員の勧誘時にも非電源方式の手軽な情報伝達手段になります。

部誌の内容

内容は市販の雑誌記事のように読み手を意識した読み物として読める記事が理想的ではありますが,放送部の場合は NHK 放送コンテストに提出する原稿・制作資料をそのまま流し込んで必要な脚注を入れたあと制作中の苦労話のログや写真を時系列順に貼るだけでも制作記として十分面白いと思います。

あと電子データだけでは人の出入りにあわせてすぐに散逸してしまうので電子データと冊子の両方を残すことをお勧めします。

先行事例

いくつかの高校高専(サレジオ高専放送部)大学の部活が部誌や記事をオンラインで公開していて大変参考になります。このほか『ビデオサロン』,『トランジスタ技術』,『Interface』,『DOS/V POWER REPORT』のような市販の雑誌も参考になります。

部誌の編集作業

さて実際の作業は最近のワープロソフトであればだいたい PDF で出力できるのでワープロソフト単体でも印刷とウェブでの公開の両方に対応した部誌を作ることができます。中身については原稿が 1 文字もなくても,ワープロソフトで空のファイルを作成して奥付と目次を最初に作ってしまえば本能的に空白を埋めずにはいられなくなった部員たちが集まってきてボールペン売り場の紙みたいにまれに上手く埋まることがあります。全 4 ページの部誌が埋まらないようであれば全 1 ページのリーフレット,ポスターにしてみたり,あるいはもう諦めて途中までのファイルと経緯を残しておくと次世代の養分になるかもしれません。

用意するもの

記事にできそうなネタ

組版ソフト

オンラインストレージに個々人の原稿を集めて最後にまとめてワープロソフトで体裁を整える流れにすると他の人が担当した分の原稿を随時読めて執筆が進みそうな気がします。

表計算ソフト

表とグラフの作成に表計算ソフトもあると便利です。活動時間のヒストグラムとか,天候と撮影時間の相関関係とか,とにかくデータをとって,適当にグラフの形式を選ぶだけで綺麗にプロットしてくれます。Excel で足りない場合は,データを csv で GNU R あるいは MATLAB,Mathematica などに渡すともっと幅広い種類のグラフをプロットできます。

画像編集ソフト

撮ってきた写真を使う際に真っ先に必要になりそうな写真のトリミングとぼかしは GIMP でできます。

写真以外に必要になってくるロゴタイプや簡単な図面の作成にはベクタ系の画像編集ソフトをお勧めします。ベクタ画像の再利用のメリットとベジエ曲線の学習コストとを比較して,学習が面倒であれば,GIMP で作ってしまっても大丈夫です。

RAW (ロー) ファイル現像ソフト

現像ソフトは RAW ファイルから JPEG や TIFF への変換,写真の収差の補正,色味の調整のほか露光不足の救済などに使用します。RAW であれば JPEG よりはるかに色数が多く,JPEG に付きものの圧縮荒れもないので,部誌の表紙やグラビアページに使う大きめの写真は RAW+JPEG で撮っておくと安心です。写真好きの方は基本 RAW+JPEG 撮りが多いと思います。2020 年 5 月現在ソニー,富士フイルムユーザは中判カメラのテザー撮影で有名な Capture One の Express エディションを無償で使えますのでおすすめです。

デジタルカメラのファイルフォーマット
JPEGRAW
ビット数各色 8 bit = 24 bit RGB各色 12 bit = 36 bit RGB
色数224 = 16,777,216 色236 = 68,719,476,736 色
ロスレスnoyes
RAW と JPEG の色数の比較

エディタ

エディタはここではレイアウト用のソフトに流し込む原稿のテキストを編集するために使います。有償では鯖江市産の秀丸エディタ,無償のものではサクラエディタ,Emacs が有名です。

UNIX 系 OS のテキストエディタは emacs または vi が一般的でどちらも「ファイルを開く編集する保存して閉じる」という最小限の操作を覚えておくと便利です。必須ではありませんが最小インストールの UNIX やレスキュー CD などでは vi しか使えないということがあります。

かな漢字変換ソフト

2020 年現在,Windows もしくは macOS をお使いであれば ATOK の体験版をおすすめします。Android では標準の Gboard が強いようです。

商用のかな漢字変換ソフトウェア

OS と一緒に提供されるかな漢字変換ソフトウェア

無償で公開されているかな漢字変換ソフトウェア

パソコン(IBM PC/AT 互換機)用基本ソフトウェア

中古や譲渡で OS のないコンピュータを入手した場合は Windows を改めて購入する以外では Ubuntu という Linux のインストールをおすすめします。また Linux が相性の問題で動かない場合も各種 BSD なら動く場合があります。Linux も BSD もウェブブラウザとかな漢字変換ソフトウェアはまず動くので部誌や台本や作業記録の執筆には十分です。

GNU/Linux

Debian 系 Linux ディストリビューション
Redhat 系 Linux ディストリビューション

BSD UNIX (*BSD)

デスクトップ OS としても使えます。

Windows NT 系 Windows OS

ウェブブラウザ

Firefox 系ウェブブラウザ

Chromium 系ウェブブラウザ

フォント

2019 年現在フォントワークスの mojimo が人気です。Adobe Fonts は学校か部活で Creative Cloud のライセンス契約があればおすすめです。

特別なこだわりがある場合をのぞいてワープロソフト標準のフォントテーマを動かす必要はないかもしれません。もし美しいフォントに興味があって,あらたに部誌のフォントを指定する場合のセオリーとしては和文の印刷物の本文フォントは明朝体,見出しのフォントはゴシック体にするのが一般的です。欧文と和文中の欧文だと,本文ではセリフ体,見出しではサンセリフ体です。近年では見出し,本文ともゴシック体のウェイト違いで組むことも多いようです。メールアドレス,URL については可読性より判読性を優先してタイプライタ体 (Courier New または Courier など) で組むことがあります。

Word のフォントテーマ編集画面
Word のフォントテーマ編集画面

Microsoft Office Word でフォントを変更するには「ページレイアウト」タブから,テーマグループの「フォント」,「新しいフォントテーマのパターンを作成」をクリックして例えば「本文フォント(英数字)」を Century から Times New Roman に変更します。Windows では Arial と Times New Roman,Macintosh では Helvetica と Times の指定は論文誌のレギュレーションでよく見られるものです。Windows 10 ではオプション機能からヨーロッパ各国語追加フォントをインストールすると Arial Nova と Neue Haas Grotesk を使用できます。ちなみにフォント名でよく使用される Nova はラテン語の新しい,Neue はドイツ語の新しい,New は英語の新しいです。

和文でよく使われるフォントの組み合わせ

特にこだわりがなければ同じメーカーの対になるフォントをペアで使うのが無難です。

游ゴシック Light を使ったロゴタイプ
磨りガラス状のアクリル銘板を想定した実在のロゴタイプを含む架空のタイポグラフィーの作例(筆者 ロゴタイプ部分 2002 年,Adobe Photoshop Elements/文字部分 2013 年,Microsoft Expression Design 4)
ここで使用した游ゴシックは「水」の一画目などに見られるインクだまりのようなデザインが特徴的です。例示用に作成した元ファイルを削除してから Broadcasting の typo に気付きました。

欧文,和文中の欧文でよく使われるフォントの組み合わせ

Times と Helvetica またはそれに似たフォントで組まれることが多いように思います。ちなみに Helvetica フォントはドキュメンタリー映画――Helvetica (2007) があります。

カメラ

スチルカメラが部の備品にあると本来の素材作成や記録の用途のほか構図の訓練にも便利です。ビデオカメラと違って冒険の余地があるので部員の私物にオリンパスが多ければパナソニックを買ってみるとか部員全員が女子部員でみんな潜在的な m4/3 ユーザであるとすれば逆に APS-C またはフルサイズ機を買ってみるとか,その逆とか,あるいは冒険はまた今度にしてビデオカメラとアクセサリを共用できるソニーにするとか,多雨多雪の地域柄エントリー機でも防塵防滴のペンタックスが欲しいとか無限に夢が膨らみます。実際にカメラを用意しようと思うと次の二つの手が考えられます。

そこそこ高価ですが放送部所属の中高生なら個人で買っておいても損はありません。過去の自分に良いカメラを買えと言いに行きたいと思ったことがあれば特に買いです。個人の感想ですが速い(=レリーズタイムラグの短い)ハイエンドコンデジを買うか,AF 一眼の入門機を買うか,単体露出計を買うか迷ったまま,露出計不良のキヤノンの FT と何もかもが遅いコンデジの組み合わせで何年も粘ったのは結果的に失敗でした。見るも無惨な歩留まり率でほとんど写真を残せていません。

中古ボディも中古レンズも何度か購入した経験からすると,キタムラで AB 品以上の半年保証有りであれば失敗は少ないと思います。メーカー直販だとソニーの場合は長期保証が魅力的です。

コンパクトデジタルカメラの場合は高級モデルの型落ち品の中古が価格性能比でおすすめです。2017 年現在では次のモデルが長い人気を誇っています。GR と RX100 はアニメーターや漫画家の取材カメラとして名前をよく見ます。

尖ったコンデジもあります。

ハイエンドコンパクトデジタルカメラの中古価格の比較(2019/10)
外装のヤレた RX100 であれば 2.2 万円で買えます。

ボディ

ハイエンドコンパクトカメラのレンズは同じ価格の一眼レフより高性能ですが次の更新時にそのハイエンドなレンズをもぎ取って残せないので 10 年単位の長期的なシステム構築にはレンズ交換式カメラをお勧めします。例えば今となっては珍しい OM レンズ群もマウントアダプタ経由ではありますが 4/3 や m4/3 マウントで使えます。放送部員としてボディを選ぶとすると今のところ次のどちらかが手堅い気がします。

AVCHD,XAVC,4K,8K などの表記があるものは動画対応のカメラです。2020 年現在 Youtube アップロード用途であれば 1080p60 が撮れれば十分かなと思います。

ミラーレス一眼は動画撮影も視野に入れると 2020 年現在は次のモデルが人気です。

6 年落ちのエントリーモデルのボディであれば 2 万円程度から購入できます。

写真寄りのモデルではニコン,キヤノン以外ではリコーが面白いと思います。また一眼レフであればダハミラー機よりもペンタプリズム機のほうが面白いと思います。予算配分は写真メインであればボディの予算を最小限にして単焦点レンズに予算を振った方が楽しめます。

レンズ交換式一眼カメラで動画を撮るメリットはセンサーサイズの大きさとレンズの自由度です。デメリットはビデオカメラに比べて長尺に向かないこと,セットアップ・運用の煩雑さ,システム全体が高価であることなどです。アクションカメラがあれば相補的に運用できそうです。

確認しておきたい主なスペックは次の通りです。防塵防滴の有無,瞳 AF の有無・精度・制限,常用 ISO 感度,対応レンズ世代(F や K マウントの場合は発売期間が非常に長いため大きく差があります),ボディ内レンズモータの有無,記録メディアの種別と SDHC 対応などのファーム更新,バッテリー種別,現像ソフトウェア対応,動画対応の有無・制限,動画フォーマット,スローモーション撮影の有無,マイク入力端子の有無,ファインダ種別,ファインダ倍率,ファインダ視野率,シャッターフィール,シャッタータイムラグの長さ。またリコール情報,持病,保守部品保持期限の確認。

交換レンズ

交換レンズの選択はオリンパスのレンズアドバイザーのページが面白いと思います。レンズアドバイザーのお薦めに従う場合は m4/3 以外のフォーマットでは換算が必要です。特にこれと決めたレンズがなければ標準単焦点といずれかの標準ズームの組み合わせが制作と訓練の両方に使いやすいかと思います。

標準レンズはフルサイズ換算で 50mm 付近を指すことが多いので m4/3 では 25mm,APS-C では 30 から 35mm,フルサイズでは 50mm と書かれているレンズがそれぞれ標準レンズです。標準単焦点レンズは普及価格帯のズームレンズより高画質で明るく軽く小さいので,標準ズームとセットで運用すると少額の投資と軽い荷物の割に色々なものが撮れます。

標準単焦点レンズの例 E-mount

写真専門学校や美大では 50 mm レンズ一本で訓練する授業があります。昨今の広角自撮りの流行で広角単焦点の 20 mm から 25 mm 付近のレンズに押されてはいるものの製品の数も市場流通量も 50 mm レンズが一番多い気がします。他方 35 mm レンズを標準とする派閥もあるようです。個人的にはフルフレーム換算 35 mm の単焦点コンデジを長く使っていた慣れもあって 35 mm が好きです。またウィキペディアによるとイメージセンサの対角長と同じ焦点距離のレンズはパースペクティブが自然になるためフルフレームだと 43 mm を標準とする説もあるようです。E マウントではありませんがリコーペンタックスのリミテッドレンズと D FA 645 レンズがこの考え方です。

焦点距離はレンズに書かれている焦点距離ぴったりというわけではなくてフォーカス位置によって画角が移動したりすることもあります。さらにセンサが僅かに小さい場合やセンサの有効画素数が電子式手ぶれ補正や歪曲収差の電子補正分狭い場合はさらに望遠側になることがあります。

レンズは単焦点で MF で大きくて重くてある程度暗くて手振れ補正レンズユニットが入っていなくて寄れなくて価格が高いほど高画質です。ズーム比が大きくて AF で小さくて軽くて極端に明るくて手振れ補正レンズユニットが入っていて寄れて価格が安いほど写真のシャープさがなくなって色のりが悪くなります。なのでお金をかけずによりきれいな写真を撮るなら単焦点レンズがおすすめです。あまり暗くても使いにくいのでマクロでない 50 mm レンズであれば F2 または F1.8 の明るいものをおすすめします。作品用途でなく単純な記録用途であれば標準ズームレンズか高倍率ズームレンズをおすすめします。

古典的なレンズ設計ではプラナー,テッサー,ゾナー,ディスタゴンが有名かつ高性能です。プラナーは絵画的な表現,テッサーは解像とコントラストに定評があります。現行の高級レンズで本当にそれらのレンズの子孫でその名前を名乗っているものもあれば,近年ではコンピュータシミュレーションによるレンズ設計が一般的でフレーバー程度に名前が残っているというケースも多いようです。

最近流行の補正レンズをどんどん入れてトータルのレンズ枚数が多いレンズほど各種収差をより補正できるので像はシャープになりますが,色の抜け(コントラスト)と光の透過(T 値)は悪くなるはずです。個人的にはレンズ枚数を抑えてコントラストに振ったレンズのほうが好きです。コンストラスト側に振ったレンズは球面収差が残ってシャープでないというだけで低いレビューが付けられやすいのと,デジタル写真では画像処理でコントラストを上げられるので商品企画上の優先度が低いという可能性はあります。ベイヤーセンサのカメラで色が薄く見えるだけで三層センサ機や 3-CMOS 機では問題ないという可能性もあります。

次に列挙するレンズは E マウントカメラでマウントできる 30/40/50 mm 代の標準単焦点レンズから独断と偏見と趣味で選んだ一部です。

APS-C センサのカメラであればレンズの実焦点距離にクロップファクタの 1.534 を掛けるといわゆるフルフレーム換算の焦点距離になります。この係数は代表的なソニー製 APS-C センサの寸法のものです。

標準単焦点レンズ 50 mm 代
標準単焦点レンズ 40 mm 代
準広角~標準単焦点レンズ 30 mm 代
標準単焦点マクロレンズ

対象物にがばっと寄って撮るのは写真の正義の一つなのでマクロレンズは正義です。マクロレンズはレンズのすぐ手前でもピントが合う(=寄れる)ので対象物をかなり大きく撮れます。デメリットは合焦までに時間がかかること,多くは F 値が F2.8 から F3.5 で暗いこと,近距離で全域にピントを合わせたい場合は三脚または大光量が必要なことです。スマホのカメラがかなり寄れることが多いのでスマホのように寄れるというメリット以上のものは感じにくいかもしれません。

標準ズームレンズ

標準ズームレンズは換算 50mm 前後の焦点距離をカバーしたレンズです。

カタログを見ると山ほどある標準ズームレンズですが標準ズームのタイプにはいくつかの要素同士のトレードオフが技術開発の歴史と市場のなかで用途毎に種別として固まったであろうものが四つくらいあって,一つは一般的な入門用カメラのレンズキットになっている標準ズームで,F3.5-5.6 と暗いですが安く軽くコンパクトでありながら使用頻度の高い広角から中望遠をカバーしています。二つ目の高倍率標準ズームは同じくらいの F 値でそこからさらに望遠側もカバーするレンズです。通常,ズーム比が大きいほど解像度もコントラストも落ちますので,高倍率ズームは画質の点でいくつか妥協する必要があります。価格は小口径の標準ズームより高価で,大口径の標準ズームよりは安価です。キットレンズとしても中級機とセットになることが多いように思います。三つ目は,小三元と呼ばれるハイエンドレンズであることが多い F4 通しの標準ズームレンズです。F4 通しは中級機から上級機のキットレンズになっていることがあります。四つ目の大口径標準ズームは F 値が F2.8 以下で且つ F 値が通しの明るいズームレンズです。こちらは大三元の一角です。どのメーカーも画質に力を入れているレンズで高価で重いのが一般的です。

このほかに HD PENTAX DA 20-40/2.8-4 Limited [APS-C] のような趣味性に振った一般的でない焦点距離のレンズもあります。

体育館や舞台照明だけのホールだと APS-C のシステムでは F2.8 でも被写体ぶれを起こすことがあります。閉め切った体育館で照明が古い水銀灯の半数点灯とかだとフルフレームの F1.8 でぎりぎり止まるかどうか位です。

大口径標準ズームレンズはフルフレーム用では 2019-2020 年現在 Tamron 28-75/2.8 A036 がよく売れているようです。APS-C 用だと Tamron 17-70/2.8 B070 があります。

大口径標準ズームレンズの価格の比較(2019/10)
基本的に高いほど良いレンズですが数が出なくて高い,数が出るから安い,戦略価格,内製割合,外注,サポートコストといった複合要因もあります。
F4 通しの標準ズームレンズの価格の比較(2019/10)
焦点距離にバリエーションがあります。

動画用レンズ

特にパナソニックとソニーのレンズは写真と動画を兼用できるように設計されているものが多いです。写真専用のレンズをオートフォーカスで使用する場合,フォーカス音対策が必要になるかもしれません。この場合はマニュアルフォーカスで撮影する,タスカムなどの PCM レコーダを用意するといった別解もあります。デクリックの切り替えができるものは間違いなく写真動画兼用レンズです。動画専用のレンズは ENG レンズやシネレンズという分類になります。

シネレンズはフォローフォーカスなどのアクセサリを取り付けできる,ズーミングでピントが移動しない,ブリージングが小さい,メカ部のトルクや移動量が一定,カラーバランスが同一シリーズ内で厳密に統一されている,明るさが口径ベースでなく透過の T 値で表示される,マウント部の剛性が高い,動画用のデータ交換インターフェースを持っているなどの特徴があります。概ね非常に高価でレンタルが基本です。次のシネレンズは高価な中でも個人所有されることがある低価格帯のレンズです。

マウントアダプタ E-mount

ソニー α6000 シリーズまたは α7 シリーズに単焦点のオールドレンズが定番です。オールドレンズはハードオフかキタムラのジャンクかごで探すと前玉傷有りなどの訳あり品を格安で購入できることがあります。前玉の傷は写りに影響しにくいのでカビがなければ練習用には十分です。ご家族や親族に死蔵品のレンズがないか確認するのも手です。

程度も評判も良いオールドレンズだとソニー E 30/3.5 Macro SEL30M35 やシグマ 19/2.8 DC DN の中古販売価格を簡単に超えてしまうので注意が必要です。

ミラーレスカメラの場合は各マウントアダプタによって色々なレンズが使用できて,E マウントだと電子接点ありでソニー A,コニカミノルタ A,キヤノン EF,シグマ SA のレンズをマウントできます。電子接点なし手ぶれ補正なし Exif なしマニュアルフォーカスのマニュアル露出でもよければペンタックス K,京セラコンタックス Y/C,京セラコンタックス G,コシナ VM,アリ PL などほとんどのレンズをマウントできます。AE/AF なら 特に EF マウントか A マウントの接点付きアダプタがあれば安く写真を始められます。ME/MF ならタクマー,ロッコール,キヤノン FD,ズイコーあたりの 28 mm か 35 mm の広角単焦点レンズに適当なアダプタを噛ませるのが一番安く済みます。

ボディ側が E マウントになるマニュアル用アダプタでは存在しないアダプタのほうが珍しいくらいにたくさんあります。

電子接点 AE/AF 対応のアダプタでは特に高性能なものが次の通りです。電子接点があるので,開放測光,瞳 AF,Exif 記録,ボディ内手ぶれ補正,レンズ内手ぶれ補正,各種収差の電子補正,周辺光量落ちの補正,回折補正などが効くことがあります。

光源

写真用の太陽光以外の光源として一般的なストロボはカメラ内蔵のもの,カメラ上部に接続するクリップオンストロボ,より大きく光量,放熱に優れるグリップタイプのもの,電源ユニットやスタンドを組んで使うモノブロックなどがあります。最近ではセッティングが出しやすい LED 式の定常光ライトも人気です。

クリップオンストロボ

クリップオンストロボなにかと暗いところで活動することが多い放送部にはあると便利な一品です。定常光ライトだと現場で電源オンですぐに撮影というのがなかなか難しいのに対して,クリップオンストロボであれば慣れればセッティングも撮影もほぼ一瞬で済むというメリットがあります。あるグレード以上の外付けフラッシュは首振り機能があって,フラッシュ光をバウンスできるので,内蔵フラッシュよりも格段に自然な撮影ができます。スタジオやホールや控え室脇の廊下,夕暮れ以降などの環境光が少ないロケーションでの撮影で便利です。予算があれば無線かシューケーブルによるオフカメラ発光に対応したモデルがおすすめです。外国製の安いものは安全マージンが小さくて簡単に発火するというか安全マージンを削って安くしているので発火に注意が必要です。

定常光ライト

LED 式のビデオライトは写真と兼用できて良いかと思います。スタジオ撮影用の足やアームの付いた高価なものが多い気がします。バッテリー式のクリップオンタイプ,リングライトなど速写性携帯性に対応するものもあります。

教本

文章作法

日本語文章の規約については新聞記者向けのハンドブックや大学生向けのレポート指南本がよくまとまっているものの,N コンに向かないものも多いので N コンの入賞に影響しないかなど色々悩ましいところです。解の候補のひとつは高校の教科書の『国語表現』で,あとは入試対策用の小論文の本が多くの放送部員にとっての無難な落としどころかもしれません。

辞典(ことばてん)

校閲

和文向けスタイルガイド

英文向けスタイルガイド

DTP

LaTeX の場合は奥村本がデファクトスタンダードだと思います。InDesign の教本は数が多く入れ替わりも速いので,書店で見比べて良さそうなものを選ぶしかなさそうです。

ロゴタイプデザイン

部誌の表紙や部活としてのロゴタイプをデザインする前にロゴタイプの専門書を読み込んでおくとフォントのライセンス違反などを防ぐことができます。図書館だと美術・工芸カテゴリ周辺にあります。

写真

写真の教本については「ニコンカレッジ監修」,「EOS 学園講師」,「ナショナルジオグラフィック」などメーカーの名前で著者を担保している入門書はとっつきやすい感じです。

グラフ作成ソフト

手軽で強力なグラフ作成ソフトとして第一に Excel が挙げられます。表計算ソフトはもともと関数電卓のオバケとして作られたものなので Excel が取っつきにくいという方は先に関数電卓に慣れるとそのまま Excel も使えるようになります。もし数学の授業で Mathematica,物理の授業で MATLAB または MATLAB クローンの Octave を使ったことがあればこれらも高度なグラフ作成機能を持っているのでおすすめです。データ分析の分野では Python と R が人気です。またインフォグラフィックや情報可視化の分野では Processing や d3js のような環境が使われることがあります。

Mathematica で加圧ボールペンの二種の本体 396 円(替え芯 51 円)と本体 178 円(替え芯 86 円)の 0 本目から 20 本目のコストのグラフを書くと 7 本目の替え芯でトータルのコストが逆転するようです。放送部員は屋外でコンクリートに落としたりして 7 本交換する前にペン軸が駄目になりそうではあります。
同グラフを MATLAB を使用してプロットしたもの。
同グラフを Google Spreadsheets を使用してプロットしたもの。いったんセルに計算してからプロットするので参照先セルのオフセット確認などやや手間です。このケースではこちらのほうが直感的だという方も多そうです。

作例

次に示す作例は適当な文章を LaTeX で組んでみたものです。

bushi_jsarticle.pdf の一ページ目
LaTeX による部誌の組版例
PDFTeX
jsarticle
jsbook

体裁

表紙

表紙に目次を入れると部誌っぽさが増します。

巻頭言

もし顧問の先生方に一言いただけるなら部誌の巻頭にそれを書き記します。続いて部長の挨拶などを入れます。

目次

部誌の最初のほうのページまたは表紙に目次と題して部誌に掲載される記事の名前,ペンネーム,ページ数を記載します。Word,LaTeX,InDesign では見出しから自動生成できます。

参考文献一覧

参考にした文献は記事毎に通常の番組制作と同じように並べて記載しておきます。丸岡高校放送部制作の「丸岡城周辺石碑マップ」は参考文献に公的な文献である『丸岡町史』が入っている点とリストの数からおそらくめぼしい文献にはほとんどあたっているであろうという点から信頼性が高いことが予想できます。

文献リストの記述例としては次の文書が簡潔かつ網羅的です。

文献一覧をより厳密に記述したい場合は SIST 02 を参照してください。一部または全部を英語で記述する場合または英語話者向けにアブストラクトのみまたは本文すべてを英訳する場合は NLM, ACS, IEEE, APA, MLA などの各種スタイルが有名です。

奥付

一番最後のページまたは裏表紙に奥付として部誌のタイトル,号数,編著者,発行日,版数,発行地,ライセンス情報を記載します。発行地まで書いておくと将来,郷土資料展に入れてもらえるかもしれません。奥付に並べる情報(メタデータ)は多ければ多いほど図書館情報学上強い本になります。

校閲

「大会で他都道府県の放送部と部誌を交換しても大丈夫なこと」,「学校図書館に納本しても大丈夫なこと」を念頭に,ペンネームの使用を徹底するのがお勧めです。

印刷製本

文章メインであれば最初は大判のインクジェットプリンタで A3 か A2 判くらいのポスターにしてみるか輪転機で印刷してみるのがコストパフォーマンス上よろしいかと思います。写真メインであれば見栄えが良くブラウザ上で編集できるフォトブック作成サービスがお薦めです。

ポスター形式であれば,大判プリンタで印刷して放送室の入り口に貼ると一般の生徒にも読んで貰えて楽しそうです。ポスターを校舎内に掲示する場合は,公立高校では多くの場合指導部,私立高校では指導部または事務局に掲示の許可を申請します。掲示後は忘れずに掲示期限の手前までにポスターを回収して部室内に避難させてください。製作にかけたコストは全く斟酌されずに思いのほかさっくり捨てられてしまいます。一度捨てられた経験があります。

部誌がフォトブック形式だと完成度や所有欲の面で面白いと思います。特にこだわりがなければ大日本印刷系列の「DreamPages」またはキヤノン系列の「PHOTOPRESSO」は無難で安心かなと思います。初回は小さくて軽い小冊子タイプのフォトブックが価格対見栄え比,労力対見栄え比でお勧めです。

フォトブックレット表紙(photoback,B5 変形,中綴じホチキス製本,12 ページ,4 色刷,Frutiger-L + 新ゴシック,@810 円 + 送料決済手数料)
フォトブックレット裏表紙
フォトブック表紙(DNP フォトイメージングジャパン,A5,中綴じ製本,24 ページ,6 色液体トナー,秀英丸ゴシック,@2,180 円 + 送料決済手数料)

納本

印刷屋さんに製本を依頼するなどしてある程度強度のある本に仕上がったら学校図書館に納本できる可能性があります。納本を行うことで部誌の散逸をほぼ防ぐことができると同時に部内外に広く読んで貰えるので新人部員のリクルートも少し期待できます。また部誌を一般に広く配布している場合は国立国会図書館などにも納本が可能(電気通信大学 MMA 2016 年春号)なようです。部誌の散逸を完全に防ぐことができると同時に OPAC による検索が可能になります。

福井県立図書館に郷土資料として納本されている福井県立藤島高等学校新聞部『藤島高等学校新聞』(2001/06/07)の検索結果

おわりに

部誌も放送部の活動もそうですがやってみたこと,学んだこと,考えたことをアウトプットする行為を教育学の用法で外化(externalize)といって教育手法としては効果の大きいもの(Krajcik 2009)らしいです。

参考文献