LaTeX――数学の大家であるドナルド・クヌースが自著のレイアウトに満足がいかずにレイアウトソフトを自分で作ってしまったという驚異的なまたはある意味典型的な出自を誇るソフトウェアです。個人で利用する場合は通常 TeX Live をインストールして環境を構築します。LaTeX は,HTML と同じ要領でテキストの装飾をマークアップ言語で指定していってソーステキストファイルから組み上がった PDF を得ます。理科系の各種論文のほかに学術・技術系の書籍もこれで組まれることがあります。有償のものもありますが,TeX Live は無償で使えます。無償のほかに嬉しい点として,公開されているスタイルファイルの範囲であればあまり手をかけなくても美しい出力が得られるので部誌向きです。反面,スタイルファイルを超えるレイアウトをしようと思うと手数の関係でまず無理なので,自由にレイアウトしたい場合は InDesign のほうが無難です。TeX Live は基本的にコマンドラインで使用するのでハードルが高くなってしまうのですが最近ではコマンドラインを使用しなくて済むような TeX のウェブサービスもあります。
表計算ソフト
表とグラフの作成に表計算ソフトもあると便利です。活動時間のヒストグラムとか,天候と撮影時間の相関関係とか,とにかくデータをとって,適当にグラフの形式を選ぶだけで綺麗にプロットしてくれます。Excel で足りない場合は,データを csv で GNU R あるいは MATLAB,Mathematica などに渡すともっと幅広い種類のグラフをプロットできます。
ジャストシステム ATOK/+ATOK――パソコン,ワークステーション,スマートフォン,タブレット,組み込み用途。ポメラ,ARROWS,PlayStation 3,PlayStation Portable,Wii,DS などで採用。2020 年現在 PC 版とスマホ版で性能差が大きいようです。ほかの IME にない機能として一度使ってみないと良さが実感できないのですが PC 版は別売の専門用語辞書で辞書連携ができるので大変便利です。
Anthy――多くの Linux ディストリビューションと *BSD のパッケージリポジトリに収録されているかな漢字変換ソフトウェア
mozc――Google 日本語入力のオープンソース版
パソコン(IBM PC/AT 互換機)用基本ソフトウェア
中古や譲渡で OS のないコンピュータを入手した場合は Windows を改めて購入する以外では Ubuntu という Linux のインストールをおすすめします。また Linux が相性の問題で動かない場合も各種 BSD なら動く場合があります。Linux も BSD もウェブブラウザとかな漢字変換ソフトウェアはまず動くので部誌や台本や作業記録の執筆には十分です。
GNU/Linux
Debian 系 Linux ディストリビューション
Debian GNU/Linux
Ubuntu
Redhat 系 Linux ディストリビューション
CentOS――Blackmagic Design の Linux 版 Davinci Resolve は Redhat 系の Linux を開発ターゲットにしています。
BSD UNIX (*BSD)
デスクトップ OS としても使えます。
FreeBSD
Windows NT 系 Windows OS
Microsoft x86-64 版 Windows――2020 年現在,放送部に必要なほぼ全てのソフトウェアとハードウェアが安定して動くので一番無難です。部誌の執筆だけであればほかの OS でも大丈夫です。
Microsoft ARM64 版 Windows――ネイティブ動作しないソフトウェアがあります。2021 年の資料では Photoshop と Lightroom がネイティブ動作するようです。
特別なこだわりがある場合をのぞいてワープロソフト標準のフォントテーマを動かす必要はないかもしれません。もし美しいフォントに興味があって,あらたに部誌のフォントを指定する場合のセオリーとしては和文の印刷物の本文フォントは明朝体,見出しのフォントはゴシック体にするのが一般的です。欧文と和文中の欧文だと,本文ではセリフ体,見出しではサンセリフ体です。近年では見出し,本文ともゴシック体のウェイト違いで組むことも多いようです。メールアドレス,URL については可読性より判読性を優先してタイプライタ体 (Courier New または Courier など) で組むことがあります。
Word のフォントテーマ編集画面
Microsoft Office Word でフォントを変更するには「ページレイアウト」タブから,テーマグループの「フォント」,「新しいフォントテーマのパターンを作成」をクリックして例えば「本文フォント(英数字)」を Century から Times New Roman に変更します。Windows では Arial と Times New Roman,Macintosh では Helvetica と Times の指定は論文誌のレギュレーションでよく見られるものです。Windows 10 ではオプション機能からヨーロッパ各国語追加フォントをインストールすると Arial Nova と Neue Haas Grotesk を使用できます。ちなみにフォント名でよく使用される Nova はラテン語の新しい,Neue はドイツ語の新しい,New は英語の新しいです。
和文でよく使われるフォントの組み合わせ
特にこだわりがなければ同じメーカーの対になるフォントをペアで使うのが無難です。
MS 明朝,MS ゴシック/HG 明朝,HG ゴシック(リコー,リョービイマジクス製。Microsoft Windows,Oracle Solaris,HP-UX などに同梱)
IPA 明朝,IPA ゴシック(独立行政法人情報処理推進機構,タイプバンク製。単体で配布されているほか,TeX Live などに同梱)
游明朝,游ゴシック(字游工房製。Microsoft Windows 8.1,Apple Mac OS X 10.9 同梱)※欲しいウェイトが OS にあればおすすめ
ヒラギノ明朝,ヒラギノ角ゴ(大日本スクリーン,字游工房製。Apple Mac OS X 同梱)※欲しいウェイトが OS にあればおすすめ
Noto Serif CJK JP,Noto Sans CJK JP(グーグル,イワタ製。Android 6.0 以降などに同梱。フォント名の Noto はノーモア豆腐の略)
源ノ明朝,源ノ角ゴシック(アドビ,イワタ製)※無償かつフォントのウェイトが多いのでおすすめ
BIZ UD 明朝,BIZ UD ゴシック(モリサワ,タイプバンク製)※ユニバーサルデザインフォントなので掲示物などにおすすめ
モリサワリュウミン,モリサワ新ゴ(商業印刷でも多いであろう組み合わせ。Adobe Fonts,モリサワ Pack for Vista などに収録)※おすすめ
そこそこ高価ですが放送部所属の中高生なら個人で買っておいても損はありません。過去の自分に良いカメラを買えと言いに行きたいと思ったことがあれば特に買いです。個人の感想ですが速い(=レリーズタイムラグの短い)ハイエンドコンデジを買うか,AF 一眼の入門機を買うか,単体露出計を買うか迷ったまま,露出計不良のキヤノンの FT と何もかもが遅いコンデジの組み合わせで何年も粘ったのは結果的に失敗でした。見るも無惨な歩留まり率でほとんど写真を残せていません。
中古ボディも中古レンズも何度か購入した経験からすると,キタムラで AB 品以上の半年保証有りであれば失敗は少ないと思います。メーカー直販だとソニーの場合は長期保証が魅力的です。
確認しておきたい主なスペックは次の通りです。防塵防滴の有無,瞳 AF の有無・精度・制限,常用 ISO 感度,対応レンズ世代(F や K マウントの場合は発売期間が非常に長いため大きく差があります),ボディ内レンズモータの有無,記録メディアの種別と SDHC 対応などのファーム更新,バッテリー種別,現像ソフトウェア対応,動画対応の有無・制限,動画フォーマット,スローモーション撮影の有無,マイク入力端子の有無,ファインダ種別,ファインダ倍率,ファインダ視野率,シャッターフィール,シャッタータイムラグの長さ。またリコール情報,持病,保守部品保持期限の確認。
写真専門学校や美大では 50 mm レンズ一本で訓練する授業があります。昨今の広角自撮りの流行で広角単焦点の 20 mm から 25 mm 付近のレンズに押されてはいるものの製品の数も市場流通量も 50 mm レンズが一番多い気がします。他方 35 mm レンズを標準とする派閥もあるようです。個人的にはフルフレーム換算 35 mm の単焦点コンデジを長く使っていた慣れもあって 35 mm が好きです。またウィキペディアによるとイメージセンサの対角長と同じ焦点距離のレンズはパースペクティブが自然になるためフルフレームだと 43 mm を標準とする説もあるようです。E マウントではありませんがリコーペンタックスのリミテッドレンズと D FA 645 レンズがこの考え方です。
Sony FE 28/2 SEL28F20 (APS-C センサで使うと 28 x 1.534 = 42.95 mm)
Sigma 28/1.4 DG HSM Art (APS-C センサで使うと 28 x 1.534 = 42.95 mm)
Ricoh HD PENTAX-FA 43/1.9 Limited
Ricoh smc PENTAX-D FA 645 55/2.8 [デジタル中判 44 x 33 mm] (645Z は 44 x 33 mm のセンサなので √(442+332) = 55 mm)
Sony FE 40/2.5 G SEL40F25G
Tamron Zeiss Batis Distagon T* 40/2 CF
Canon EF 40/2.8 STM
Tamron SP 45/1.8 F013
Sigma 45/2.8 DG DN Conetmporary
Cosina Voigtländer Nokton 40/1.2 Aspherical SE E-mount
Sony E 30/3.5 Macro SEL30M35 [APS-C] (46 mm 相当)
Sony DT 30/2.8 Macro SAL30M28 [APS-C] (46 mm 相当)
Sigma 30/1.4 DC DN Conetmporary [APS-C] (46 mm 相当)
Sony Zeiss Sonnar T* E 24/1.8 SEL24F18Z [APS-C](2019/10 現在中古 51,000 円)
Tokina atx-m 23/1.4 [APS-C]
Sigma 19/2.8 DC DN Art [APS-C](2019/10 現在中古 12,000 円)
Ricoh HD PENTAX DA 21/3.2 Limited [APS-C](2019/10 現在中古 21,000 円)
このほかフルフレーム用の 20 - 24 mm レンズを APS-C で使用する。
標準単焦点マクロレンズ
対象物にがばっと寄って撮るのは写真の正義の一つなのでマクロレンズは正義です。マクロレンズはレンズのすぐ手前でもピントが合う(=寄れる)ので対象物をかなり大きく撮れます。デメリットは合焦までに時間がかかること,多くは F 値が F2.8 から F3.5 で暗いこと,近距離で全域にピントを合わせたい場合は三脚または大光量が必要なことです。スマホのカメラがかなり寄れることが多いのでスマホのように寄れるというメリット以上のものは感じにくいかもしれません。
Sony FE 50/2.8 Macro SEL50M28(ネイティブ FE レンズで最もスタンダードな標準マクロ)
Sony E 30/3.5 Macro SEL30M35 [APS-C](ネイティブ E レンズで最もスタンダードな標準マクロ)
Ricoh HD PENTAX DA 35/2.8 Macro Limited [APS-C]
標準ズームレンズ
標準ズームレンズは換算 50mm 前後の焦点距離をカバーしたレンズです。
カタログを見ると山ほどある標準ズームレンズですが標準ズームのタイプにはいくつかの要素同士のトレードオフが技術開発の歴史と市場のなかで用途毎に種別として固まったであろうものが四つくらいあって,一つは一般的な入門用カメラのレンズキットになっている標準ズームで,F3.5-5.6 と暗いですが安く軽くコンパクトでありながら使用頻度の高い広角から中望遠をカバーしています。二つ目の高倍率標準ズームは同じくらいの F 値でそこからさらに望遠側もカバーするレンズです。通常,ズーム比が大きいほど解像度もコントラストも落ちますので,高倍率ズームは画質の点でいくつか妥協する必要があります。価格は小口径の標準ズームより高価で,大口径の標準ズームよりは安価です。キットレンズとしても中級機とセットになることが多いように思います。三つ目は,小三元と呼ばれるハイエンドレンズであることが多い F4 通しの標準ズームレンズです。F4 通しは中級機から上級機のキットレンズになっていることがあります。四つ目の大口径標準ズームは F 値が F2.8 以下で且つ F 値が通しの明るいズームレンズです。こちらは大三元の一角です。どのメーカーも画質に力を入れているレンズで高価で重いのが一般的です。
Sony FE 28-70/3.5-5.6 / Sony E 16-50 [APS-C]
Sony FE 24-240/3.5-6.3 / Sony E 18-135 [APS-C]
Sony FE 24-105/4 G / Sony E 16-70/4 Z [APS-C]
Sony FE 24-70/2.8 GM / Sony E 16-55/2.8 G [APS-C]
このほかに HD PENTAX DA 20-40/2.8-4 Limited [APS-C] のような趣味性に振った一般的でない焦点距離のレンズもあります。
特にパナソニックとソニーのレンズは写真と動画を兼用できるように設計されているものが多いです。写真専用のレンズをオートフォーカスで使用する場合,フォーカス音対策が必要になるかもしれません。この場合はマニュアルフォーカスで撮影する,タスカムなどの PCM レコーダを用意するといった別解もあります。デクリックの切り替えができるものは間違いなく写真動画兼用レンズです。動画専用のレンズは ENG レンズやシネレンズという分類になります。
Sony E PZ 18-105/4 G [Super 35 mm/APS-C]
シネレンズはフォローフォーカスなどのアクセサリを取り付けできる,ズーミングでピントが移動しない,ブリージングが小さい,メカ部のトルクや移動量が一定,カラーバランスが同一シリーズ内で厳密に統一されている,明るさが口径ベースでなく透過の T 値で表示される,マウント部の剛性が高い,動画用のデータ交換インターフェースを持っているなどの特徴があります。概ね非常に高価でレンタルが基本です。次のシネレンズは高価な中でも個人所有されることがある低価格帯のレンズです。
Sony E PZ 18-110/4 G SELP18110G [Super 35 mm/APS-C]
LED 式のビデオライトは写真と兼用できて良いかと思います。スタジオ撮影用の足やアームの付いた高価なものが多い気がします。バッテリー式のクリップオンタイプ,リングライトなど速写性携帯性に対応するものもあります。
教本
文章作法
日本語文章の規約については新聞記者向けのハンドブックや大学生向けのレポート指南本がよくまとまっているものの,N コンに向かないものも多いので N コンの入賞に影響しないかなど色々悩ましいところです。解の候補のひとつは高校の教科書の『国語表現』で,あとは入試対策用の小論文の本が多くの放送部員にとっての無難な落としどころかもしれません。
Adobe Systems Software Ireland, Ltd. “Camera Raw で RAW ファイルを現像”「Adobe Photoshop Magazine」Adobe Systems Software Ireland, Ltd.(2014/10/08 情報取得)。
Diamond, Jared M., Collapse: how societies choose to fail or survive, 2nd ed., New York: Penguin, 2011.
〔ダイアモンド,ジャレド『文明崩壊――滅亡と存続の命運を分けるもの』楡井浩一訳,草思社文庫,2012 年〕
Franklin, Benjamin, "The Autobiography of Benjamin Franklin", Jared Sparks, The works of Benjamin Franklin, Boston: Hillard Gray, 1836-1840.
〔フランクリン,ベンジャミン『フランクリン自伝』松本慎一・ 西川正身訳,改版,岩波文庫,1957 年〕
Krajcik, Joseph S. and Namsoo Shin, "Project-based learning", Keith R. Sawyer ed., The Cambridge Handbook of The Learning Sciences, Cambridge: Cambridge University Press, 2006.
〔Krajcik, Joseph S. and Namsoo Shin「プロジェクトベース学習」Keith R. Sawyer 編『学習科学ハンドブック』森敏昭ほか監訳,培風館,2009 年,250-265 頁〕
Peterson, Bryan, Bryan peterson's understanding composition field guide: how to see and photograph images with impact, New York: Amphoto Books, 2013.
〔ピーターソン,ブライアン『ナショナルジオグラフィック プロの撮り方 構図を極める』関利枝子・武田正紀・倉田真木訳,日経ナショナルジオグラフィック社,2013 年〕
Peterson, Bryan, Understanding Exposure, Fourth Edition: How to Shoot Great Photographs with Any Camera, 4th ed., Berkeley, California: AmPhoto Books, 2016.
〔ピーターソン,ブライアン『ナショナルジオグラフィック プロの撮り方 露出を極める』武田正紀・関利枝子訳,日経ナショナルジオグラフィック社,2013 年〕